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2023年4月29日(土)~30日(日)は、 横浜で2日間イベントを開催しました。 1日めは、 ≪栄養士・健康支援者のための写真教室≫ 今年は、 3年ぶりに再開された、 サンモール・インターナショナルスクール主催の ≪フードフェア≫からスタートして、 山手の洋館などを撮影し、 山下公園では、いくつもの造園業者によって 設置された花壇と、 その背景にある海や船を入れ込んで 写真教室については、 講師をお願いした大橋禄郎先生が 後日、ブログの「ロッキー・ロード」で 書かれると思うので、 ここでは、2日目に開催した、 「食ジム」第120回の内容を記しておきます。 座長は、高齢者施設の立ち上げから関わっておられる 管理栄養士の髙橋寿江さん。 髙橋座長は、以下のように進行をされました。 1.認知症やフレイル―いま思えば、身近なところにもあった こんな事例。(親族、ご近所、その他) 2.「たぶん認知症やフレイルにはならない(ならなかった)」 あの人、この人のライフスタイルから学ぶこと。 3.書籍やメディア、栄養士、健康支援者がすすめる 「フレイル、認知症の予防」のちょっと違うなと思うところ。 4.大公開!! 栄養士としての、 私の「フレイルや認知症対策」アプローチ、1.2.3……。 1番の項目では、 参加者の身近なところにあったたくさんの事例が発表されました。 ・「ゴミ出しで、人に会うのがおっくう」と言い始めた方の事例。 お茶やお花の先生をなさるくらい 手先が器用だった義理の母。 80歳を過ぎたころから、 「人づきあいがめんどうになってきた」 「ゴミ出しで人に会うのがおっくう」と言うように。 関わっていたすべてのサークルに参加しなくなり、 あるとき、「自分の家がわからなくなった」と 帰宅できない状態に。 結果として、いまは高齢者施設に。 ・父の妹である叔母は、 早期退職制度を利用して50歳で円満退職。 子どもを出産して、実家に戻り、 産後の自分をサポートしてくれたときのこと。 ある日「あなた誰?」「どこの子?」と言われて、 ドキッとした。 50歳で早期退職したときには、 「これからは自分の好きなことだけをしたい」と言って 悠々自適な生活をしていたはずなのに……。 ・知人の男性、なんと50歳で認知症に。 その要因の1つは、 ボランティアで東日本大震災の惨状を 目のあたりにしたことから。 強い衝撃を受けた結果、 それを「忘れよう」「忘れたい」という思うあまり、 それ以外の記憶までをも 消去することになったのではないか……と分析。 ・勤務しているOB会に参加したときのこと。 以前は「仕事ができる」人として知られていた上役と 久々にお会いしたが、 「話し方も歩く速さも、信じられないくらいスローペースに」 話もかみあわなかった。 ・「動物性食品は食べません」と、 食にストイックであった学校給食調理師の同僚の女性(60歳) 仕事ができて、動作もテキパキしていたが、 ある日、子どもたちに提供する肉をゴミと思って捨ててしまう、 という事例が発生。 そのころから、 今までできていた仕事ができなくなってしまい、 ついに、辞めていただくという事態に。 ・83歳で亡くなった義母。 晩年、電話や洗濯機が壊れたというので 新しいものに買い替えてあげたけれど、 「慣れていないから使いにくい」と、 今まで頻繁に使っていた電話をかけなくなった。 良かれと思ってしたことが、 認知症を促進する原因になったかも……と分析。 ・100歳の曾祖母。 認知症になったとき、まわりの反応は……。 「ここまで長生きしたのだから、 いつなってもおかしくない」と、 事態を冷静に受け止めているのが印象的だった。 ・80代の母は、肺炎で入院して以来、 気力、体力ともに低下した。 そこで、娘を同居させたことで、 「孫の世話をしなくてはならない」という使命が生まれ、 いま、母の気力、体力は元に戻っている。 ・登山が趣味でいつも仲間を先導する役を務めていた父に、 「歳をとってからの登山は、 危ないからやめたほうがいいよ」と、 提案したことを後悔している。 父は、その後、犬の散歩などを楽しんでいたが、 その犬も亡くなってしまうと、 1日中、テレビの前に座ってお菓子をポリポリ食べている その姿を見るたびに、 「フレイルまっしぐら」と悲しくなる。 ・サークルの代表のお宅に伺うたびに、 奥様がいつもお料理をつくってもてなしてくれた。 その方が75歳で心臓の手術をなさってから、 お茶を入れることなど、 いつもできていたことができなくなっていた。 ご家族は気づかなかったご様子。 そこで、ご家族に、その方の変化を告げた。 そのことで、ご家族は、 母親が認知症を発症し始めていることを知ったよう。 大橋先生のお話では、 ある「放送構成作家」が、 ご自分の父親の認知症をヒントに、 ミステリー小説を書いて、 「ミステリーがすごい大賞」を受賞した。 『名探偵のままでいて』というタイトルの作品。 ストーリーは、 「レビー小体型(しょうたいがた)」の 認知症のおじいさんが主役。 トラが部屋に入ってきて、いま、そこにいる、 という幻視が起こる。 しかし、それゆえに、想像力は豊かで、 孫娘が持ってくるミステリアスな問題を、 居ながらにして解いてゆく、というもの。 この「レビー小体型認知症」は、 幻視が起こりやすく、 パーキンソン病に合併する傾向がある。 大橋先生は、それがヒントになって、 パーキンソン病で寝たきりの奥様が ときどき、「姉が窓の外にいる」 「孫が玄関に来ている」などという理由がわかった、とのこと。 座長の髙橋さんは、 こうした症状のある入所者を見ているご様子。 私は、身近な例として、 母のことを紹介させていただきました。 両親は、長い間住み慣れた 兵庫県姫路市で生活をしていましたが、 10年くらい前に、 妹の出産を機に、自宅を売却して、 東京・中央区に引っ越しをしました。 父も母も、都内に親しい人はおらず、 夫婦いつもどこでもいっしょに生活をしていました。 父の転倒が原因で寝たきりとなり、 その後、亡くなって以来、 母は1人で生活をしています。 いつも、出かけてはいるものの、 日本橋のデパート巡り、 カフェでお茶をするというのがルーティーン。 日本橋は、無料の循環バスが通っているので、 いつもそのバスに乗って出かけます。 出かけていても、「歩かない」「話さない」ので、 歩幅がだんだん小さくなっているように感じています。 さて、「食ジム」で、 みなさんの事例報告を伺って気づいたことは、 19人の事例のうち14人が女性。 認知症は女性に多い。 いや、女性のほうが 生活習慣病のハードルを越えて長生きするから、 結果として、その先にある認知症が発症する。 (認知度の一部は「生活習慣病」でしょうか) この1番の項目の時点で、 たくさんの事例にワクワクしていたのは私だけではないはず。 この事例には、 「栄養素が足りなくて認知症やフレイルになる」人はおらず、 共通点は、コミュニケーション不足にあることが すでに証明されたようなものでしたから。 一方、2番の項目、 「認知症やフレイルにはならないあの人、 この人のライフスタイルから学ぶこと」では、 ・加山雄三さん いつまでも、聴衆に音楽を届けようとする姿勢 ・佐藤愛子さん 『90歳なにがめでたい』など、 いくつになっても丸くならず、世間と戦う姿勢。 ・加藤タキさん 母が社会運動家として有名な加藤静江さん。 母といっしょに幼いときに渡米をし、 海外から見た日本という視点で論評する ファッションコメンテーター。 ・退職してからも、資格をとったり、 勉強し続けていたりした父の姿。 ・祖母(90代) 畑仕事を日課にしており、 アパート経営をしているので金銭的にも不安がない。 耳が遠い以外は健康に問題なし。 孫が遊びにくると、もてなしてくれたり、 畑でつくった野菜でおつけものにしてくれて 持たせてくれたり、おもてなし精神にあふれている。 私自身は、2番に「大橋禄郎先生」をあげたいと思います。 なぜなら、 86歳を過ぎたいまも、 私たち栄養士のために、 いろいろの企画やセミナーの講師をご担当くださったり、 大橋先生主催の文章教室に、 おおぜいの栄養士たちが通わせていただいたり……。 先生は、年齢がらみの話に名をあげられるのを 強く嫌われる方なので、 こっそり、このブログで、本心を書いてみました。 「フレイル」「認知症」に関する 今までどのご本にも載っていない内容が ここでお聞きできたことに興奮しています。 「フレイル」「認知症」対策として、 「栄養素だけでは解決できない」ことがたくさんある、 ことを、今回もあらためて実感しました。 だからこそ、「1日2食で健康になる」と提唱するドクターが 「認知症」の方に足りない栄養素を説いたとしても、 なんの説得力もありません。 「認知症、フレイルは、栄養障害ではない」ことを、 あらためて実感した貴重な1日となりました。 そして、「フレイルや認知症の対策の1つ」として、 栄養士がきょうからでもできるアクションの1つとして、 「未来を見せてさしあげる」ということ。 参加者の岩田博美さんがご発言された内容では、 「具体的には、施設にいる栄養士であれば、 『献立表を一覧でお見せする』ことも 未来を見せてさしあげることになると思います」。 座長・髙橋寿江さんからは、 「未来を見せて差し上げる方法は それぞれの現場にたくさんあるはずです」 と、おっしゃったことも印象的でした。 私自身の対策としては、 「年間を見渡せるカレンダーを指さししながら、 『〇月には、山下公園にバラを見に行こう』 『〇は、お誕生日月だから、〇〇へ行こう』」 などというように、身近な人にしていることが、 「未来を見せていることになるのだ」と 自分の対策がまちがっていないことにも 自信を持つことができました。 この「食ジム」に参加したことで、 これまで 「もう私の父母は〇歳だからしょうがないのよ」 などといった「歳のせいにしていた」方がいらっしゃるとすれば、 そうした発言は、今回限りでなくなることでしょう。 昔、私が社会福祉学科の学生だったころ、 大学の先生たちから 「昔、教員だった人がアルツハイマーになりやすい」 と、学んだことを覚えています。 当時は、 「いつも教えてあげる姿勢の人は、 誰かから教わろうという気にならないからかな?」と 思っていました。 いま、おとなになって思うことは、 それは教員の世界だけではなく、 いろいろの職業の方にも言えること。 仕事と家の往復という世界だけの人より、 仕事と家庭以外に、 自分のことを必要としてくれる人、場所、植物、ペットが いる人、いない人では その人の健康度が大きく異なるように。 アドバイザーの大橋先生からは、 「今回の『食ジム』は、 世界中でどこででも話し合っていない内容だね」 と、ご指摘いただいたこともうれしいことでした。 新緑の横浜で、コロナ過明けの横浜中華街~山下公園~元町は、 大勢の人でにぎわっていました。 大橋先生がおっしゃっていたとおり、 「コロナが終わると、この反動が起こるよ」 そのとおりになりました。 「いま、充実した人生を仲間といっしょに活動していること」が、 認知症やフレイルを遠ざける結果につながることを確信しています。
by palmarosaK
| 2023-05-03 00:58
| 食ジム
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