
計量カップや計量スプーンは、
女子栄養大学創立者の香川綾先生が考案なさいました。
当時、日本人にとって日常的な仕事も、
科学的にはほとんど研究されていなかったために、
吸水の法則性、米の分量と水との割合、
加熱時間などを実験によって、確かめられたそうです。
そこで、香川先生は、
仕事やご研究の必要性から料理塾に通われました。
ところが、「柔らかくなるまで煮て」とか、
「ほどほどに」とかの表現がとても多く、
あいまいに感じられ、
そこで、研究室に調理器具の他に、
時計や温度計、メスシリンダーをそろえ、
料理塾で習った料理を作り、手順に従って、
分量、時間、温度などを
ひとつひとつ記録なさいました。
誰もがおいしく料理を作れるためには、
材料、調味料の分量、加熱の加減、加熱時間などを
はっきり示した料理カードを作ることで、誰もが
料理を何回でも作れるということをお考えになりました。
また、調理の軽量化のために、
作られた計量カップと計量スプーン。
新潟県燕市へ香川先生が
昭和23年に出かけられ、
200ccカップ、30cc、15cc、5ccの
スプーンをステンレスで作ってもらったのが最初だったそう。
その試作品を東京に持ち帰られ、
1つは文部省に、1つは農林省に、
もう1つは、放送局に届け、
日本中に普及する意義を説かれました。
いま、当たり前のように使っている、
計量カップや計量スプーン。
これらの道具ができるまでには、
どういう背景であったのか、
どういう思いで作られたのか、
先生から直接お聞きしたかった……。
調理道具ひとつひとつをとっても、ロマンがある……。
その道具のおかげで、
私たちは全国共通
同じ料理が再現でき、
健康生活に役立てることができます。
計量カップや計量スプーンを使うたびに、
香川綾先生のことを、忘れないように……。
参考資料 :『BIOmedica』7(1)、1992